子供の生活と社会問題(虐待・養護施設・貧困・福祉)|地域子ども総合支援者(インクルーシブ教育推進OT)育成講座 第5回〜
平成30年10月6日の第5回の講座は地域子ども総合支援基礎講座(公開講座)最後の講座。
1−5回の公開講座には保護者,先生,議員,行政様々な方にご参加いただき,繋がれたこと大変嬉しく思います。
本日の講師 琉球大学の本村真教授には,私達ゆいまわるも学校現場にも同行させていただき多くのことを学ばせていただいておりおます。
福祉のスーパービジョン:本村先生は黒川先生の下で学びながら児童相談所で取り組まれてきました。黒川先生は福祉の視点だけでなく心理的な視点を持って臨床に関わってこられた先生で、本村先生も心理系を学ばれていらっしゃいます。
90年代不登校が目立つようになり島根県でカウンセラーとしてご勤務。
沖縄に戻ってからも、児童養護施設などのカウンセラーとしてご活躍の末,琉大では社会福祉士の育成など福祉関係をメインにご教授されておられます。
❏ 教育と福祉の連携の難しさ
<教育と福祉の立場の違い>
[教育]
場面で貧困の連鎖を断ち切るための大きな役割「義務教育」「学校給食」
[福祉]
歴史的に貧困対策をベースにここの分野ニーズへの対応へと細分化されてきた。昔から貧困対策は中心的な課題であった。児童の最善の利益の保証・個別思考(最近強まってきた思考)
<対等と平等>
◻ 教育系:等しく均一な提供に注目「平等を重視」
◻ 児童福祉:存在価値の同等性に注目「対等を目指す」*「努力」によって平等の結果をもたらす
結果の差と努力の差について考える
平等に提供された機会の中で、努力すれば結果がもたらされる。その努力できる機会を設けているのだから、それによって及ぶ結果の差は個人の責任・・・なのか????
ここの観点が教育と福祉の連携を難しくしている一つである。
<教育系のジレンマ>
結果による差別:システム上標準的な「平等運営」とならざるおえない状況(1クラス35ー40名)
だからこそ
▶ 地域や他の専門領域による学校現場のサポートが重要
❏ 障害児への支援について
[ 障害児支援の基本理念・グランドデザイン ]
一人ひとりの個性と能力に応じた配慮
教育も含む専門機関との連携と調整
ライフステージに応じた一貫した切れ目のない支援
親支援・家族支援
⬆︎
先生・学校だけでは難しい!
*今回の講座で目指す「地域子ども総合支援」「インクルーシブ教育推進OT」は障がいの有無にかかわらず全ての子ども達が対象であるが、厚生労働省が提示する障がい児への支援の理念だけを見ても、全ての子ども達が通う学校で先生だけでそれを支えていくことは難しいことがわかる。教育・福祉・家庭・地域の連携の重要性、そしてそこを管轄する関連機関や専門家・行政の連携が重要なことはよくわかる。
❏ 貧困と自己肯定感
<子どもの自己肯定感を支える生活>
子ども達の自己肯定感は生活の中で築かれる。生活環境によって自己肯定感が育ちにくい状況がある(沖縄は相対的貧困3人に1人がその状況)
自己肯定感は子ども達の成長に重要である。
しかし、実際に自己肯定感が下がりそうだ!助けてくれ!というSOSに素早く対応していくには子どもの生活全般の発信・受信相応に連携できるシステムが必要。実際は難しい。
「学校」は全ての子どもが通う:学校のプラットホーム化
小学校の特に低学年の間に、重要な自己肯定感の成長を保障できるように専門家が学校にアウトリーチできるシステムを作りたい!
作業療法士は学校へのアウトリーチに貢献できる一つの職種である。
<育みたくても難しい家庭状況>
子ども達の自己肯定感が育つポイント
「話を聞いてもらえる」
「感情を受け止めてもらう」
「好きなことを楽しむ」
「役割活動の尊重」
「失敗への丁寧な説明と振り返り」
決してお金がかかる活動ではないが、貧困家庭では親がその活動に時間をかける、心を通わせる余裕うがない。貧困は「お金がないからできない」という活動に止まらないのである。
“ 自己肯定感低下 ・ 惨めさ ”
から子供達を守らないといけない
❏ 貧困の連鎖を止めたいが難しい社会状況
先生が忙しい
昔は担任の先生が教室で子供達を見ながら採点するなど、子供達と関わる時間を持っていた。
子どもの生活からの不安を様子から捉えて関わろうという先生も多くいた。
今は宿題も増え、先生がすべき業務も増えた。
企業の環境変化
昔は中小企業など地域の企業が中卒の子ども達も能力に応じて雇用していた。
❏ 児童虐待
<虐待への対応>
学校からの情報提供
学校は早めに子ども達のSOSを察知し通報
児童相談所は施設に保護することによってポジティブな家庭環境・関係の部分も切り離してしまうことを懸念して入所には慎重である
学校と児童相談所との見解が分かれるところである。
児童虐待への対応
児童相談所への施設入所:通報の16%程度が入所につながる(18歳でサービスは終了となる)
要保護児童対策地域協議会:子どものストレスへの対応
<トラウマ記憶>
戦っても勝てないと理解するとその恐怖感や無力感の記憶を凍結する>トラウマ記憶
トラウマ記憶は類似の刺激によってスイッチが入る
学校生活の中で叱られる経験などで、類似スイッチがはいると、そのスイッチによって子どもが反応する「逃げる」「嘘をつく」「攻撃する」といった行動をとる。
その行動は、教育していこうという支援者側に無力感を感じさせてしまう
<試し行動>
関わる大人に試し行動をとる
虐待を受けた子どもは「殴られ慣れている」ため、殴られた方がマシだと考えている事が多い。虐待を経験した子どもが不安を抱いているのは「この人は僕の味方なのか敵なのか」関係性が不明確な状況である。
試し行動によって相手を探ろうとする
試し行動は,殴られている子は相手が殴りたくなるような行動する。ネグレクトの体験をした子は相手が無視したくなるような行動をとる。性的虐待を受けたお子さんは露出した服を着て相手にその気を持たせようとする。(反応行動は一例である)
<支援者と子どもの関係>
試し行動は関わろうとする大人に無力感を感じさせてしまう。
支援者に対し信頼を置いている(置きたい)から試し行動をする。嫌われる前に嫌いになってもらおうという不安からくる行動でもある。
関わりのポイント:スイッチが入っているときは嘘をつく・逃げるという行動をとるため深追いはしない。しかし、スイッチが入っていない時にしっかり根気強く向き合うことが重要である。
問題行動を起こした時しか来てくれない大人達
どうしても状況上問題行動が発生した時に関わりが強まる傾向にある。
そのことは子どもから見れば注意させることしかないといった被害的な経験として蓄積される。
支援者側のスイッチ
支援者側が自己の体験(生活歴)から怒りや無視などのスイッチを持っていたりすることがある。
試し行動はそういった支援者にとって、そのスイッチを引き出すため、大変危険である。(怒り・対象の子を嫌いになる)
関わりのポイント:子どもの関わりを一人でやらずチームで行うことでその危険な状況を回避できる。
本日盛りだくさんの内容は,どれをとっても私達ゆいまわるの学校訪問で直面する内容でした。もっと深く学びたい,90分では足りないという多くの感想もあり,私達もトラウマ記憶や試し行動だけでも別途講義をしてもらいたいと思うほどでした。
本当にありがとうございました。